【地平線通信】No499



 冒険者・行動者のあつまり「地平線会議」。その会報に寄稿する機会をいただいた。お題はお前の元気を書けとのことだった。ココに集う人は本気を問う。中途半端なことは書けない。

 八甲田山を眺めながら今年の撮影行を振り返った。まだ終わってないが、この一年は完全に自分の行動を信じて突き進んだ。その風来坊を支えてくれた仲間と家族。関わった人と自然とを思い起こし書き記すことで、自分自身の振りかえりとする。人生って奴はその積み重ねでしかないんだろうと思いつつ。原稿用紙10枚とチトながいが。




【単独空撮行報告】



「飛びながら目頭が熱くなった」━━年間300日、車中泊の単独空撮行報告

10月15日、江本さんからの電話が鳴った。「多胡、通信原稿を書け!」「先月号で歩未が面白い家族作るって書いてくれてな、今度はお前だ」と。人生の顧問に言われては「了解」以外の選択肢はない。話は速攻でまとまった。

 俺はそのとき、紅葉の八甲田山(青森)の空撮に挑戦していた。10日ほど八甲田直下の田代平にベース(離発着地)を構えていた。しかし風が読めず飛ぶ気にはなれなかった。そこで、十和田湖の南にある熊取平にベースを移し、いよいよ明日は飛ぶというところだった。往復70キロのビッグフライトだ。「しかし、江本さん。俺は地平線のみんなにお伝えするようなことは何もしていないよ」というと「いいから、お前の元気を書け!」と顧問。ということで、多胡のこの1年をどうぞ!

家族との約束

 俺はこの5年ぐらいだろうか。活動を悩み考えつづけた。その結果「自分はどうありたいか」という考えに行き着いていた。その背景には Rice work と Life work の葛藤が根深くあった。迷っているところにドローン空撮の出現で仕事はなくなった。ご存じの通りだ。しかし、空は自由だった。そしてその自由と撮っているときの充実感は他の何ものにも変えようのない尊い時間だった。そして、俺はなんでこんなに苦しいのだろうかを真剣に考えた。

 徒歩に野宿で四国遍路をやったり、セミナーに参加したり、いろいろと苦手なことに手を出した。今となれば、どれもこれも多くを学んだが決定打にはならなかった。そして、つまるところ深く自分と向き合わないと駄目だということが分かった。そして時間はかかったが、好きなことに生き、それをヤリ続けるために経済を回せばいいのだと気がついた。

 それを実行するには覚悟と家族の理解が必要だった。そして家族と相談し、親子3人、それぞれが自分の持ち場でおもいきりやるという約束をした。俺の持ち場は空だ。歩未は木だ。娘は学校だ。各々の思い切りの姿勢を、家族全員で応援する。これが多胡家のあり方だ。そう決めた。そして俺は空の旅を始めた。年間300日、車中泊の単独空撮行だ。


コロナと俺ルール

 コロナがやってきた。世の中は外出自粛要請令が出ていた。俺は直感した。混乱期こそ己を信じる。そして俺はルールを作った。地元京都の木津川にある広大なフライトエリアで2週間にわたり自主隔離合宿を行った。周囲にはなにもない河川敷だ。隔離にはちょうどいい。その間、休校中の娘も呼んだ。1人で踊り、野猿のように走りまくりストレスを発散させていた。

 季節は春。うららかだった。今この状況でできることはないか。そして、我が家のある加茂町の山桜と、その隣町の和束町の茶畑を撮ることを決めた。どちらもフライトエリアから飛んでいくことのできる里山景色。撮った映像はYouTubeで見られるようにした。外出自粛中に地元のエアショット。住民からの声援は温かだった。

 自己隔離を完了した俺は、俺ルールの第二弾のもと、四国での空撮行をスタートさせた。5月20日だった。俺は誰とも接触することなく愛車で現地に入り、現地人と同じような生活をしながら、河川敷から空撮活動を試みる。ずっと車中泊。これが計画。世の中では学校の休校延長の議論が為されていた。

四国空撮行

 向かった先は高知県の仁淀川。やっぱり俺は川が好きなんだよ。仁淀川を河口から源流までを空撮することが目的だ。仁淀川の河口に到着すると、モーターパラグライダーが飛んでいた。偶然だった。コロナ自粛の気まずさを引きづった移動だった。しかし、ここで一気にスイッチが入った。モーパラをおいかけると、そこには5人ほどの土佐のフライヤーがいた。俺はマスクをして走りより大きな声で挨拶すると「あんたはあの飛んでる多胡さんかい?」と、勝手に話は転がりだす。「おおいに仁淀川を飛んでくれ。困ったことあったらなんでも相談してくれ!」と土佐フライヤーの北川(80歳)さんは歓迎してくれた。

 仁淀川を河口から源流まで飛んだ。ベースは河川敷に3か所確保した。少しづつ上流へ近づき、そこから飛ぶ。これぞと思った空間では川から山間へと翼を走らせた。四国山地の深淵にはどこまでいっても僅かな平地に暮らしが点在していた。河口の土佐湾から源流の石鎚山まで124キロ。飛行回数12回。飛行時間16.9時間。仁淀川流域、その全てを俯瞰し撮った。ラストの石鎚山へのフライトは達成感からか、飛びながら目頭が熱くなった。上空で涙したのは2003年のマッケンジー以来だ。

 道中、遍路写真家の野澤さん(72歳)と再開した。「行く先が不明なときこそ、遍路が大切なのに誰も歩いていないよ。現金だよな。寺も寺で、こんな時こそ拠り所として存在して欲しいのに、ブロックだもんね」と嘆いていた。

 仁淀が終わると、清流をハシゴした。四万十川も河口から源流まで196キロをやった。飛行回数12回。飛行時間24.2時間。撮影行のあいまに梅雨にはいった。雨が降ると飛べない。その間、宇佐の宮本さん(50代)に大変世話になった。宮本さんは第二の家を俺にあてがってくれ、我が家のようにくつろぐことができた。その間、Youtubeのアップを連発し、地元のテレビ取材などもうけた。

8月に入り撮影再開。中流域の十和では空間と人に魅せられ、ひと月ほど滞在した。ここで飛ぶと四万十川の背景がよくよく分かるのだ。その間、恩地ファミリーには四万十川で取れたアユを毎日のように頂いた。一生分喰ったのではないかというほどだ。四国は4か月にわたり飛んだ。その間、どれだけの人に助けられたことか。9月の中程、紅葉にそなえ一度我が家へ。道の駅は幾分駐車する車も増えたが、カーナンバーはみな高知だった。


人情あふれる空撮行

 八甲田、十和田湖は青森にある。八戸のフライト仲間をたより青森に入る。紅葉は八甲田の中腹からなだれ落ちるかのごとく十和田湖へとすすみ、里を包みこむ。その様子を撮るために40日にわたり現場に張り付くことになった。その間、現地での出会いとサポートは今までを凌駕する流れになっていた。

 サポートは米、肉、果物、野菜とありとあらゆる食べ物の差し入れであったり、離発着場の提供であったり、宿泊や風呂券、宴、BBQ、そして志の申し出であったり……。紙面の都合上、名前は挙げきれないが(Blogでみてね!)、八戸の金田一さん(72才)と黒石の三上さん(52才)には破格のサポートを受けた。八甲田では飛行回数12回、飛行時間18時間をやった。紅葉は爆発していた!

 その中でも東八甲田にある又兵衛茶屋の女将さん、山本さん(60代)とのやりとりは印象的だった。

「私もね、コロナになって人の流れが止まったでしょ」「そして私にできることはなんだろうって真剣に考えたよ」「そしたら、やっぱり考えている人は居るもんだね」「思ってることを本気で伝えると、相手にして欲しいことを伝えるって言うのかな、そうすると事がグイグイと動きだすんだよね。このお米もそう。美味しいの分けて貰ったの(本当に旨かった)」

「大間のマグロも形はあれだけど良いところを分けてくれて。このリンゴもちょっと形わるいけどフジより美味しいんだよ! 私にできることを精一杯やるって決めたら、みんな助けてくれてね!」と女将さんは言った。この話を聞きながら俺は頷きまくっていた。この空撮行は女将さんの言う通り、みんなに助けられ俺は生かされている。自己資金には限界があるけれど、奇跡の連発で飛べていた。

 時代は変わったんだよ。と言うと大上段だが、昔からそうだった本質。その流れにより多くの人が反応するようになってきている。価値観が変わったんだよ。豊かさの基準というのかな……。 その他にも女将さんには沢山たくさん背中を押してもらった。「青森のために撮ってくれてありがとう!」と女将さん。この言葉、一生忘れませんわ!

YouTube, TAGO channel

 撮った映像はすべてYouTubeのTAGO channelで公開している。現在150本程の日本各地の空撮映像がアップされている。1~2分で見られるサクッとした空撮映像だ。多胡の声とエンジン音とで構成されるワンカット勝負。撮影現場からアップしてる、是非見てチェンネル登録!

 「YouTubeの広告収入を狙ってんのね!」と思ってもらって結構。時代はそうだしね。でも狙いはこうだ。

 俺は「本当のことを知りたい、自分の目で見たみたい、だから、空を飛び撮っている」「それと同時に、記録された空間は地域の宝だ! その宝を自分の利益にしている場合じゃねえ!! だから全ての映像を公開することに決めたっ!!!」。との檄文をうったA5のチラシを会う人会う人そのすべてに配っている。歩未が作ってくれた! その裏面には「何にも左右されず撮るために、この活動は自己資金とサポーターの協力で成り立っています。僕の活動をサポートしてください!」とお願いし、口座番号もいれた。俺は本気だ。訳の分からぬ自信と、前例はない、これでヤルしかないという覚悟がそうさせている。

 「今回は青森を飛ぶよ! 青森を押すよ! 地元の宝が写ってるし! YouTubeで見てな! よかったら俺の背中も押してな!」てな感じで、地元の人とやりとりをしている。そうすると、地元の人は話してくれるんだよね。俺はこの生のヤリトリがたまらなく好きだ。この温度感と空気感を感じて飛んでいきたいのだ。

 俺は今日も飛んでます。お近くを飛んでいるときは是非ベースまで。熱いコーヒーとビスケットぐらいは準備できます。近況はYouTube、Blog、FBで随時。Have a nice day !!!(多胡光純



以上