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From above 

旅した大地を空から望む

 広い空間にあこがれ、僕の旅は始まった。

 オーストラリア内陸に広がる土漠地帯を自転車で走ったり、カナダ北部やアラスカを流れる大河をカヌーで下ったり、マダガスカル島を自転車で走り回ったりした。そのなかでもやはり北極圏の自由な空間が好きで通うことになる。

Australian Outback

 初めは雄大な北極圏の川にあこがれて、そして自分自身の力でキャンプをする充足感に満足していた。しかし旅を重ねるうちに僕の旅に現地に生きるデネインディアンやマッケンジーイヌイットが登場してきた。彼らの話を聞くうちに、今まで見て感じてきた極北の大地の景色が変わって見えてくるようになった。風景に彼らのストーリーを重ねると、これまでの世界がぐっと奥行きと幅を持って見えてくるようになったのだ。それから僕は、川に寄りそって生きる人々の物語と川の写真を組み合わせて極北の世界を表現したいと思い、独学で写真を学び始めた。

Canada Mackenzie River 

 伝統的なデネ・インディアンの生活を体験するため、フィッシュキャンプに滞在し共同生活を送った。北極にいる白オオカミを求めツンドラの川を旅したこともあった。ストーリーはどんどん増えていく。けれども、いくら川の写真を撮っても満足できるものはなかった。川の流れがあってそこに生きる人がいる。景色単体を見るのでなく、彼らの生活単体を見るのでもなく、そのふたつが融合した世界観が欲しいのに、それが表現できないもどかしさを感じていた。

Dene People

 1997年、マッケンジー河の川旅で川沿いにあらわれたベアーロックという450mの岩山に登ってみた。岩のむこうの世界を眺めてみたい、そんな動機だった。ところが、その山頂から眺めたマッケンジー川の流れは、なんとまさに僕が体感そして表現したい世界だったのだ。

 今まで眺めていた景色はカヌーの上から見える水面50センチの世界だった。視界は川岸に生えるスプルースの森に完全に遮られていたのだ。それが高さをとると川の景色が立体的になり、景色が奥行きをもって浮かび上がる。この景色こそ僕がまさに欲しかったものだった。

 それからは川下りの途中に丘があると駆けのぼり、川の姿を高台から眺めることを繰りかえした。ところが、北極圏の川は途方もない平らな大地を流れる。高台はほんの一部分にしかなく、何度も悔しい思いをすることになった。納得してシャッターを切るには高さが必要なのだ。解決策が見つからないまま時は流れた。

Bear Rock

 2001年のツンドラ地帯の川旅から帰国すると、僕はモーターパラグライダーという乗り物に偶然出会った。それは平地から離陸し、自由に空を飛べる乗り物で、高度も思いのままに上げることができる。さらに僕一人でも持ち運べ、カヌーに載せることもできそうだった。「そうだ! これでマッケンジー川の上を飛べばいいんだ」

Training at Skytrial

 自分の求むイメージをつかむには自分で飛ぶしかない。周囲には無謀といわれる決断だったが、空からマッケンジー川を望み、生きて帰ることだけに目標を設定した。猛トレーニングの末の2003年の夏、僕は単身カナダへと旅立った。北極海へ流れ込む全長1800km」のマッケンジー川にモーターパラグライダーを持ち込んだのだ。キャンプ道具、一ヶ月分の食料、撮影機材、それにモーターパラグライダーをカヌーに積み込み、マッケンジー川を一人で下る。空から川を眺めたいポイントにカヌーで漕ぎつけ、キャンプを張る。そして、最高の風と光が来る時間を待ち、キャンプから離陸し、エンジンパワーをかけてどんどんと高度を上げ、 マッケンジー川の流れを空から眺めた。

All equipment on canoe

 空からの眺めは、まさに僕が感じたい世界だった。

 空を飛ぶと同時に、大地のストーリーを表現するに値するイメージを手にすることができた。ストーリーが生まれる大地を空から撮る。自分の表現スタイルを手にした瞬間だった。

 

 

 2003 10月 多胡光純

Mackenzie from sky